データの入稿に至っては、Illustratorのアプリケーションでできることや、どのような手順で行われているかなどを考慮しながら出来上がりの仕様を考慮してデータを作ることが必要です。
今回は、入稿データの作り方と色表現の4つの基本についてご紹介します。
トンボの種類
仕上げたデザインを、正確に印刷したり加工したりするための大切な目印がトンボです。欧米ではトリムマークとも呼ばれており、ADOBEのIllustratorのメニューでもトリムマークとなっています。
印刷データ作成の入り口になるのがこのトンボの作成ですが、トンボには主に3つの役割があり、版どうしの位置が正確に合っているかどうかや、両面印刷の表裏が正しいかどうかなどを確かめる見当合わせのためのセンタートンボ、次に断裁位置を示すためのコーナートンボ。
そして、二つ折りのパンフレットや本のカバーなど、折り加工を施すものをつくる際に折りの位置を示すための折りトンボの3種類です。
コーナートンボは2段階の線で構成されていて、外側を外トンボ、内側を内トンボといい、断裁を行うのは内トンボの線ですが、断裁のズレを考慮して外トンボと内トンボの間に遊びの部分が設けられています。
この部分を塗り足しやドブともいい、媒体によって幅の大きさが異なる場合もありますが、一般的にはこの幅を3mm取ります。
断裁の端まで写真を配置する場合や、色面を続けたいという場合は、この塗り足しの部分まで写真や色面を伸ばしておく裁ち落としを作る必要があります。
トンボの配置の仕方
Illustratorでアートボードにトンボを配置したい場合は、判型の大きさで長方形を描き、それを選択して、オブジェクト[メニュー]→[トリムマークを作成]を選択しします。
その際、センタートンボとコーナートンボは作成されますが、折りトンボは作成されません。
折り部分をつくりたい場合は、センタートンボの線を複製して移動させ、自分で折りトンボを作成する必要があります。
作成されたトンボは、レジストレーションカラーという色で着彩され、レジストレーションカラーは、すべての版をベタ(100%)で出力する色です。
同じ位型の置にベタ色があることで色合わせの役割を果たすので、レジストレーションカラーはトンボ以外の部分で使わないようにしましょう。
たとえば、基本となる4色のインキの組み合わせによって色を表現するプロセス4Cでレジストレーションカラーを使ったオブジェクトをつくってしまうと、CMYKをすべて100%でベタ塗りしていることになり、濃度オーバーで、エラーや印刷事故につながります。
また、トリムマークを作成するオブジェクトの線の設定はなしにしておくことも重要で、線のあるオブジェクトを選択してしまうと、線幅分、縦横の寸法がそれぞれ大きくなってしまい、仕上がり寸法が大きくなってしまうので注意しましょう。
オーバープリントとノックアウト
2つの版が重なるときに、下にある版をそのままにして上から別の版を乗せることをオーバープリントや、ノセといい、下にある版を白にして上から乗せることをノックアウト、あるいはヌキ合わせといいます。
たとえば、色面の上にK100%で文字を乗せた場合、ノックアウトにしておくと、版がずれた場合は白い部分が見えてしまい、オーバープリントは、色面にそのまま文字が乗る為、下の白が出る心配はありません。
オーバープリントの設定は、Illustratorでは「属性」パネルで行いますが、印刷所の製版システムでは、事故を未然に防ぐため、その指定を無視しK100%だけを自動的にオーバープリントにして出力するのが一般的です。
オーバープリントとノックアウトの設定は、印刷所の技術やリスク管理の方針にも関わることなので、注意すべき箇所があるときは、あらかじめ印刷所と確認をとっておくようにしましょう。
版ズレとトラッピング
版に付けられたインキを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷するオフセット印刷の精度は大変高く、繊細なノックアウトもきれいに表現することができますが、それでも、絵柄の細かさや判型の大きさ、用紙の伸縮など、様々な要因によって版ズレが起こることがあり、文版ズレは著しく文字の可読性が落ちるので、注意が必要です。
特に多色刷りを用いたデザインのケースでは、インキの乾燥などの都合から2パスと呼ばれる2回に分けた印刷をすることがあり、1度目の印刷で紙が伸びてしまうと、細かい見当を正確に合わせるのはかなり困難です。
そこで、少しずれても目立たないようにするため、版自体に予防策を講じておくトラッピングが対策として一般的です。
トラッピングとは、図か地のどちらかを伸ばし、重なりの部分をっくることで、白い紙地が出ないようにする手法で、このトラッピングには2種類あり、図ねを伸ばして地に重ねることをスプレッド、地を伸ばして図に重ねることをチョークといいます。
トラッピングの処理はデザイナーが施すことも可能ですが、トラッピングをどのような量や幅でどこに行うべきかは、印刷所の技術によっても大きく異なるので、印刷所の技術者に委ねたほうが良いケースが多々あります。