今回の広告やクリエイティブは、何が目的ですか?
12年前のBtoCのデザイナー駆け出し時代の自分であれば、どんなクリエイティブでも「会社の売上を上げる為」と真っ先に答えたと思います。
「売上を上げる、利益を上げる」ということは、営業の方はもちろん、総務の方や経理の方、そしてCSの方々も皆「会社の売上と利益を上げるため」に働いています。
その為、ビジネス全体の目的では決して間違ってはいないとは思いますが、広告やクリエイティブの目的をより詳細にクリアーにすることで、効果を上げることができると思っています。
今は以下の4点に気をつけています。
- その広告で売上を上げる為に、クリエイティブのゴール(KPI)を決める
- ユーザーに行動へ移してもらう為の計画と設計
- ユーザーにまず見てもらう為の文章・キャッチコピー
- 行動へ誘導するためのデザイン
今回は、この中の 「②ユーザーに行動へ移してもらう為の計画と設計」で使用する、ベネフィットとクリエイティブ・ブリーフについてご紹介します。
目次
ベネフィットとは?
クリエイティブ・ブリーフの前に、広告やクリエイティブの核となるベネフィットについて知っておく必要があります。
横文字は基本苦手ですが、このベネフィットと言う横文字はクリエイティブを作る上で、避けて通ることはできないと言ってもいいと思います。
ユーザーが望むものに対価を頂いて提供することがビジネス。
ユーザーが望むことを伝えるのがコミュニケーションで、お客様が望んでいることとは、商品ではなく得られる結果です。
つまり、サービスや商品を使うことで、あなたは〇〇することができる。あなたは〇〇に変化する。
これがユーザーが望んでいること「ベネフィット」です。
このように、主役は商品やサービスではなくベネフィットで、営業の方はコミュニケーションを介してこれをユーザーに伝え、デザイナーは広告やクリエイティブを介してこれをユーザーに伝えます。
つまり、広告やクリエイティブの主役は商品そのものではなく、お客様が望む結果が「ベネフィット」で、これをユーザーに届ける必要があります。
一例ですが、以下は2016年に発売された「技術の日産」の新型SERENAの広告です。
単純に商品の特徴の「後部ドアを足を出して開けることができる」ことは、あくまで特徴で、寝てしまった子供を抱えたお父さんの写真と共に、「足だけでも、開く&閉まる。まるで、魔法のトビラです。」と言うコピーで、ベネフィットを表現しています。
このように、アピールポイントとして掲げる「商品の特徴」よりも、購買者にどのような体験をし、どのような変化が現れるのかをより具体的にしてユーザーへ示すことが必要です。
このベネフィットには、大きく分けて2つに分類されます。
機能的ベネフィット
機能的ベネフィットは、商品やサービスを使うことで得られる機能的な結果です。
「使うことで、時間が短縮できる」「商品を使うことで、暖かい冬が過ごせる」「商品を使うことで、痩せることができる」が、この機能的ベネフィットにあたります。
情緒的ベネフィット
情緒的ベネフィットは、商品やサービスを使うことで得られる気持ちや気分のことで、機能的ベネフィットから生まれる感情です。
「時間が短縮できてゆったりした気分になれる」「冬に暖かいからやさしい気持ちになれる」「痩せることができて積極的な気持ちになれる」が、情緒的ベネフィットです。
ベネフィットと一緒に明記する物
ベネフィットはユーザーへ伝えるもので非常に重要なものです。
ですが、それだけではユーザーの懐疑的な見方があり、効果を最大化できないこともある為、以下4つの何かを記載することで、ベネフィットの信憑性と効果をより大きくすることができます。
- 競合他社がある場合には、他社との違いや独自性を打ち出す
- ベネフィットを信じられる理由。信じてもらえる根拠。
- 定量的な根拠。
- ユーザーにベネフィットを提供できる理由。
全て4つを明記する必要はありませんが、併用することで信憑性も高まりユーザーの懐疑的な部分を払拭できるので、より良いクリエイティブにできると思いますが、広告やクリエイティブのスペースが限られている場合は、ベネフィットに応じて取捨選択をしましょう。
ベネフィットを盛り込んだクリエイティブ・ブリーフ
クリエイティブ・ブリーフは、外資系の広告代理店が持ち込んだ手法と言われ、広告制作などにおいて戦略のベースとなる情報を完結にまとめたものです。
5年程前に外部広告代理店の方とのクリエイティブのやりとりで、依頼の提出用に使っていましたが、今は要件段階で煮詰まった時に自問自答のアウトプットの方法で使用しています。
内容は実際の広告制作の前に、方針や目的などをステークホルダー全員で確認するためのもので、たった1枚でできるシートで作ります。
クリエイティブ・ブリーフの項目
業種や業態によって項目に差分が多少あるようですが、自分が使っていた時の物は、以下9つの項目です。
ベネフィットを含めて目的やターゲットの洗い出しを行います。
- 今回の広告・クリエイティブの目的:KPI
- 誰の為に伝えるか?:ターゲット
- ベネフィットの根拠1:商品・サービスの特徴
- ベネフィット
- ベネフィットの中で広告に最も合うもの:ベネフィットの優先順位
- ベネフィットの根拠2:定量的なもの
- 期待する行動:CVポイントの作成
- 行動を後押しする仕掛けの有無
- 期間と予算
これらを抽出することで、自ずとクリエイティブの内容と方向性が決まるので、制作は割合スムーズに進みます。
クリエイティブ・ブリーフの方法や詳細は、宣伝会議の磯部光毅さんの記事がわかりやすいので、興味のある方は是非ご覧ください。
なぜクリエイティブ・ブリーフを作るのか?
たった1枚のクリエイティブ・ブリーフを作成することで、クリエイティブの判断基準や、なぜそれに至ったかを共有することができ、はたまた外部の方への依頼としてもそのまま使用できます。
そうすることで、社内の意見のヒアリングや承認も容易で巻き直しもなく、制作意図を外部のデザイナーへ正確に制作意図を伝えることができ、何より効果が高いクリエイティブを作ることができます。
このように、広告やクリエイティブの制作前の整理のストレスをなくし、結果早くアウトプットする為にもクリエイティブ・ブリーフが非常に有効です。
色々試行錯誤しながら、自分や会社にあったクリエイティブ・ブリーフでアウトプットの質とスピードを上げていきましょう。
参考サイト
参考 クリエイティブブリーフとは広告の設計図である。宣伝会議