近年、TwitterやFacebookのソーシャルメディアの普及に関連してインバウンド・マーケティングのマーケティングの概念が浸透しています。
今回は、インバウンド・マーケティングの基礎知識についてご紹介します。
目次
インバウンド・マーケティングとは?
インバウンドという言葉は、「外から中へ流入する」という意味で、WEBマーケティングの文脈だと、自分からお客さんを探しに行くのではなく、「お客さんに、自然に見つけてもらう」マーケティング手法を指します。
インバウンド・マーケティングの手法は、大きく分けて4つのステージに分かれ、各ステージ毎に実施する施策を「ATTRACT(興味を喚起)」「CONVERT(リード化)」「CLOSE(顧客化)」「DELIGHT(ファン化)」の4つのステージでそれぞれ施策を実施します。
ビジネスで売り上げをあげようと思った場合、まずは商品・サービスの情報をお客さんに売り込んですぐに形にしたいと思ってしまいますが、インバウンド・マーケティングはこれとは発想が異なります。
インバウンド・マーケティングでは、まずインターネット上で、訪問者に喜ばれそうな情報、コンテンツを準備して、検索エンジンのキーワードや、クチコミなどで自然に将来の見込み客に見つけてもらうマーケティングの手段です。
多くの場合は、検索エンジン・コミュニティ・ソーシャルメディアからの集客方法を用います。
例で言えば、HRTechのサイトを運営している場合、いきなり人事評価やクラウドサービスの売り込みをするのではなく、面談の方法や人事考課に関する悩みや基礎に関する知識などをメディアやFacebookで発信します。
このようにして、まずはテーマに関心のある利用者たちに役立つ情報を提供して見つけてもらうことに集中し、その後、ゆっくりと関係を育みながら、機会が来た時に周りにいる人たちが、将来のお客さんに変わっていくというのが基本的な流れです。
インバウンド・マーケティングが注目された時代背景
インバウンド・マーケティングは、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアの発達に比例して、この手法が広まりました。
また、インターネット上でのダイレクト・マーケティングの急速な普及により、インターネットでのWEBビジネスの競争激化やクチコミ情報の普及により、ユーザーが今まで以上に商品の選別に厳しくなっています。
大量に送られてくるメルマガ、自宅のポストからあふれるDMやチラシ、しつこく画面に現れるバナー広告などにウンザリした経験があるかと思いますが、これは、自分自身で知りたいことは自分で調べられるようになり、自分が欲しいと思わない情報はシャットアウトするようになった為です。
インバウンド・マーケティングはこのような流れの中で、すぐに売りつけるのではなく、将来も見据えて長期で関係を築いていく方法として、今は多くの企業で取り組まれています。
インバウンド・マーケティングのポイントはコンテンツ
インバウンド・マーケティングのポイントは、商品・サービスに興味のありそうなお客さん、文字くはその周辺にいる人たちに、役に立つ情報をどんどんプレゼントするところから始まります。
例えば、人事の会社であれば、評価に関係する本の書評や、人財育成の概念などをわかりやすく説明するブログを更新し続ける。といったコンテンツが考えられ、役に立つコンテンツをどんどん増やしていきます。
こういったコンテンツをWEB上で増やしていくことで、自然に検索エンジンで検索するユーザも増えていき、本当に役に立つ情報として話題になれば、ファンもでき、徐々に拡散されていきます。
これらのコンテンツを更新する際は検索結果から人が集まりやすくするために、SEOの工夫も必要ですが、Facebookで「いいね!」がたくさんついて拡散しそうな話題性のあるコンテンツ、自分の業界のお役立ち情報など、それを読む人にとって価値のあるコンテンツは、様々なものが考えられると思います。
そして、何より重要なのは続けられることです。
WEBサイトは紙の媒体とは異なり容量が許す限り掲載スペースに制限がなく、いくらでも情報を載せることができます。
コツコツと毎日に近い頻度でコンテンツを増やし続けていけば、いつの間にかWEBサイトができていくと思います。
自然と何回も接触している状態を作る
インバウンド・マーケティングは、自然に見つけてもらうことが重要で、気がつけば、このメディアの情報をよく読んでいる状態にすることがポイントです。
そして、気がつけば、このメディアの情報をよく読んでいるという状態へするには、FacebookやTwitterといったSNSを使った情報の拡散との相性が良いと言われています。
この、自然に何回も接触している状態にするためには、主に下記6つのパターンがあります。
- ファンになって、公式サイトに自分から何度も訪問してもらう
- キーワードでホームページに自然に引っかかるようにする
- ブログのファンになって、RSSリーダーなどで何度も読んでもらう
- メールマガジンを登録してもらう
- Facebookページから「いいね!」を押してファンになってもらう
- Twitterをフォローしてもらう
以前から利用できたインバウンド・マーケティングの手法や手段は、上記の1〜4が主流でしたが、一部のコアなユーザーしか開拓できませんでした。
メールマガジンからSNSへ
メールマガジンは今でも活用している企業は多く、メールアドレスさえもらえれば、メールマガジンという形で、講読解除をされない限り何回もアプローチができます。
ですが、わざわざメールアドレスを入力して登録してくれる人は数が限られています。
そんな中で登場したのが、FacebookやTwitterの存在で、Facebookページのファンになってもらうには、ワンクリックするだけでOKで、Twitterもワンクリックでフォローが可能です。
しかも、一度クリックしてもらえば、FacebookやTwitterから継続的に情報を流すことができます。
FacebookもTwitterもタイムラインに情報がきっと流れてくるだけなので、フォローした方も、そこまで情報として邪魔にはならず、メールマガジンのようにメールボックスに大量に情報が届くのとは異なります。
このように、ソーシャルメディアは、お客さんに嫌われない形で、何回も接触するチャンスを簡単に作ることができる強みを持っています。
SNSをマーケティングに使えるか、使えないかということで悩んでいる人は、まずはこの点をしっかり理解する必要があります。
ですが、FacebookやTwitterなどのつながりは緩やかなものです。
少しずつ役に立つ情報や面白い情報を提供して良い関係を築きながら、長期的にはメールマガジンの登録やWebサイトやブログの愛読者になってもらうというように、徐々にコアなファンに変わってもらうように仕組みを作っていかなくてはいけません。
インバウンド・マーケティングの特徴
インバウンド・マーケティングが特徴としている点は主に以下の4点です。
広いターゲットにアプローチが可能
インバウンド・マーケティングはちょっと興味があるくらいのユーザーに、役立つコンテンツを配信しながら徐々に惹きつけていくマーケティング手法です。
ダイレクト・マーケティングであれば、一挙にお客さんに変わるようにかなり可能性の高いターゲットをめがけ、マーケティングを行う必要がありますが、もっと裾野の広いターゲットにアプローチできるため、その対象を広げることができます。
ユーザーがユーザーを連れてくる
コンテンツを読んで共感や感銘を受けてくれたユーザーは、他のお客さんの候補になるユーザーを連れてきてくれる可能性があります。
Twitterによるリツイート、Facebookによるシェアなど、クチコミ効果で徐々にアプローチできる対象が増えていくのもインバウンド・マーケティングの特徴です。
それまでのマーケティング手法では、商品やサービスを購入してくれない人たちは文字通りいらない人たちでしたが、インバウンド・マーケティングであれば、コンテンツを読んでくれるユーザーは皆大切なサポーターになる可能性があります。
安定したマーケットができる
インバウンド・マーケティングは、消費者に対して、継続的に情報を提供して仲良くなる関係で、きちんとしたメディアができあがれば、そこには常に人の流れができています。
その為広告費の高騰や不景気の波などが起きても、比較的影響を受けにくい独自のマーケットを作ることが可能になります。
好感度が上がる
1960年代後半に行われた社会心理学の実験で、頼度の多い情報は好感度が上がるという単純接触効果の実験データがあります。
何度も目にする広告やラジオで流れる音楽など、気になって実際に購入するということが稀にあると思いますが、それです。
インバウンド・マーケティングとして作ったコンテンツは、役に立つコンテンツでかつ何度も接触するため、好感度が上がる可能性が圧倒的に高まります。
好感度の高さは、商品・サービスへの安心感にもつながり、十分な信頼関係ができることで、競合他社にお客さんが流れなくなり、価格以外での競争力がつきます。
労力はいるが効果絶大のマーケティング手法
インバウンド・マーケティングは非常に手間がかかりますが、好きになってもらい、売り込まずにユーザーや顧客を集められるというのはとても魅力的です。
一方で、情報やコンテンツをどんどん出していくことを継続的に続けていくことは、かなりの労力が必要です。
特にコンテンツを作り始めた当初は、なかなかアクセスも集まらず、すぐにビジネスに結びつかないため、多くの企業が挫折してしまいがちです。
一方で、広告など資金に頼ったマーケティング手法は、どうしても資本力があり、継続力がある大きな規模の会社に有利になってしまいます。
予算規模の小さな会社や、事業年数の浅い会社は、しっかりした戦略をつくれるのであれば、インバウンド・マーケティングを活用したほうが、低コストで着実に成果を出せるようになってきています。
激しい競争を避けるためにも、自分のWEBサイトでは、どんな役に立つ情報を発信していくことができるのかを、しっかりコンセプトを築きあげましょう。
参考サイト
参考 インバウンドマーケティングとは? 5分でわかる総論と実践のポイントinnova 参考 【解説】インバウンドマーケティングとは?そのプロセスと手法、成功の鍵を紹介SEDesign 参考 繰り返し接しているうちにどんどん好きになるのはなぜ?日本心理学会