クライアントワークのデザインレビューについて、これまでいくつか書いてきましたが、今回は少し実践的な話をしようと思います。テーマは、初稿で複数案を出すかどうか、についてです。
目次
複数案を出すのは、一見親切に見える
初稿の段階で、方向性の異なる2〜3案を用意して、クライアントに選んでもらう。これは、デザインの現場でよく使われる手法だと思います。選択肢を用意することで、クライアントの意向を早い段階で確認できて、一つの案に固執するリスクも減らせる、という理屈です。
自分も以前は、この方法を当たり前のように使っていました。
案を複数用意すること自体が、丁寧な仕事の証だと思っていた時期もあります。ただ、今は意識的に、この進め方をほとんどしなくなりました。
複数案は、選んでもらうためではなく、迷わせるために働くことが多かった
実際にやってみて気づいたのは、複数案を並べると、クライアントは「どれが目的に合っているか」ではなく「どれが好みか」で選びがちになる、ということでした。
特にデザインの専門知識がない相手にとって、並んだ3案を比べる作業は、思っている以上に難しいものです。それぞれの案が何を意図して作られたのかが伝わりきらないまま、色やフォント、雰囲気といった表面的な違いだけで判断してしまう場面を、何度も見てきました。
「良いとこ取り」が、一番厄介な結果を生む
複数案を見せたときに、よく起きるのが「Aのこの部分と、Bのこの部分を組み合わせてほしい」というリクエストです。

